はじめに
DMC Sunny SP3は、プッシュし型のダーツプレイヤーにとって、“ちょうどよく引っかかり、ちょうどよく抜ける”バレルです。
ただし、スイング型のプレイヤーにとっては、最初「前に飛ばない」「重い」と感じるかもしれません。
この記事では、実際の使用感と、設計・構造の数値的分析をもとに、「なぜこのバレルはプッシュ型に向くのか」「なぜスイング型は違和感を感じるのか」を解剖していきます。
【結論】Sunny SP3はどんなプレイヤーに合う?

フォームタイプ | 適応 | 理由 |
---|---|---|
プッシュ型 | ◎ | リリース方向とカット・テーパーが一致し、力の伝達がスムーズ |
スイング型(中級者〜上級者) | ◯ | リリースの安定性が高ければ活かせる可能性がある |
スイング型(初級者) | △ | バレルの抜けを悪く感じやすく、リリースのテンポを乱しやすい |
Sunny SP3を実際に使って感じた事とその理由
スイング寄りのフォームの私にとって、Sunny SP3には以下のように感じました。
- カットが引っかかりリリースが遅れ、ダーツが手から抜けにくい
- バレルの重さで、リリースのテンポが崩れる
そして、何回か投げていると「スイング型には向かないのでは?」と感じてきました。
その理由を構造的に分析してみたことで、むしろ「プッシュ型にこそ合うのではないか」と思うようになりました。
Sunny SP3のカット・テーパーを解析
後方シャーク×縦カットの複合構造

- シャーク幅:約1.4mm
- 縦カット幅:約1.2mm(6本)
- 溝深さ:約0.3mm
- テーパー角:約1.9°
Sunny SP3の後方には、やや深めのシャークカットに加えて縦カットが6本配置されています。
縦カットがあることで横滑りを防ぎ、押し出す方向と摩擦の方向が一致しやすく、リリース時に力が抜けやすくなります。
また、テーパー角が1.9°と緩やかであることから、指を添えたままでも前方へ押し出しやすい設計です。
この“摩擦方向の整合性”が、抜けの良さとリリースの安定に繋がっています。
中央リングカットと角度安定性

- リング幅:約1.0mm、間隔:等間隔
- 溝深さ:約0.3mm
中央部分には等間隔にリングカットが配置されています。
カットの深さと間隔のバランスが良く、どこに指を置いても角度の再現性が上がりやすいです。
特に、グリップに迷いやブレが出やすいプレイヤーにとっては、「自然に指が止まる」位置が分かりやすくなっており、ダーツの角度が毎回同じになりやすい効果が期待できます。
前方の軽めシャークとテーパー

- テーパー角:約1.6°
- シャーク幅:約1.45mm
前方は比較的浅めのテーパーとシャークカットが配置されています。
前方部はグリップというより、添え指や投げ出しのサポートを担うため、滑りすぎず、かといって引っかかりすぎないようになっています。
結果として、ダーツの先端が下がることを防ぎ、フォーム全体の再現性を安定させる補助的な役割を果たします。
重心の位置と体感のズレ
Sunny SP3はカタログ上ではセンター重心に設計されていますが、後方に深めのカットが集中しており、自然とグリップ位置が重心より後方に寄りやすくなっています。
物理的には、重心より後ろを支えると前側が重く感じられるのが一般的です。
しかし、Sunny SP3のように後方に摩擦が集中している構造では、指への抵抗感や残り感が強くなり、「手元に重さがあるように感じる」体感が生まれやすくなります。
その結果、実際の重心とは異なるにもかかわらず、「リア重心に近い印象」を持つプレイヤーがいるのは、このような構造と感覚のズレによるものです。
この体感は、プッシュ型プレイヤーにとっては“後方から前に押し出す”動作と自然に噛み合いやすく、力の方向とバレル全体のバランスが一致しやすいというメリットにも繋がります。
【長く使える?】カットの摩耗と耐久性|使用時間の目安付き
Aフライトレベルで週5日×2時間の使用で、厳しめにみて、4〜6ヶ月でのカットの変化が想定されます。
- 前方部:3〜4ヶ月で滑りやすくなってくる
- 中央部:5〜6ヶ月でリングの輪郭が曖昧になってくる
- 後方部:4ヶ月前後で縦スリットの存在感が薄れてくる
ただし、メインとなる後方部は、縦カットがあることで摩耗の進行が分散されやすく、見た目以上に長く使える可能性
「カットが削れても使える構造」という点がSunny SP3の特長でもあり、カットの耐久性そのものよりも“変化しても使えるバレル”と言えるでしょう。
スペックまとめ

項目 | 数値・仕様 |
全長 | 44.0mm |
最大径 | 7.0mm |
重量 | 20.5g |
重心位置 | センター |
後方テーパー | 約1.9° |
シャークカット | 幅:約1.4mm/深さ:約0.3mm |
縦カット | 6本/幅 約1.2mm |
中央リングカット | 幅:約1.0mm/深さ:約0.3mm |
前方テーパー | 約1.6° |
深掘り:リリースの再現性を支える3つの設計要素
ここからは、Sunny SP3の設計が「なぜ投げやすさにつながるのか」を、より構造的・動作的な観点から掘り下げていきます。
1. 摩擦ベクトルとリリース方向の一致
Sunny SP3は、縦カットとテーパー角が「押し出す方向」と一致するように設計されています。
そのため、手の動きに沿ってスムーズにダーツが抜けやすく、余計な引っかかりや滑りすぎが起こりにくいのが特長です。
結果として、指からの抜けがスムーズになり、「引っかかる」でも「滑る」でもない、ちょうどよい抜け感を生み出し、リリースのタイミングにブレが出にくくなります。
2. 支点の安定性がリリースの軌道を整える
後方の深めのカットにより、指がその位置で安定して止まる構造になっています。
これは「どこで支えるか」が明確に決まりやすく、フォーム中に発生しがちな力の逃げや軌道のズレを抑える役割を果たします。
特に、押し出すような動作では、この支点が後方に安定していることで、リリース方向が定まりやすく、意図したラインを維持しやすくなると感じられるプレイヤーも多いでしょう。
3. 重心と力の方向が揃いやすい設計
体感としてリア寄りに感じられる重心位置は、プッシュ型にとっては「支えて→送り出す」動作と整合性が取りやすい構造です。
前方が軽く、後方に重さとグリップの安定点が集中しているため、力をかける方向とバレルのバランスが一致しやすく、結果的に“素直に前へ飛ばしやすい”印象を与えます。
このように、構造面から見ても「押し出す動き」とバレルの設計が噛み合っており、再現性の高いフォームを築きやすいと考えられます。
さいごに
Sunny SP3は、スイング型の自分には難しいと感じたバレルでした。
しかし、その感覚を細かく分析することで、プッシュ型に向いているバレルではないかと感じました。
抜けやすさを重視したカットやテーパーにより、リリースの再現性が高まりやすく、狙った軌道に素直に飛ばしやすい構造になっています。
「リリースが不安定」「グリップ位置が定まらない」といった悩みを持つプッシュ型のプレイヤーにとって、ひとつの答えとなり得るバレルです。
※補足
Sunny SP3は、スイング型寄りに見える龍波光彦選手のモデルですが、「スイング型/プッシュ型」という型分けよりも、リリースの瞬間にどのように力を伝えているかが重要ではないかと考えています。
龍波選手は可動域の広いフォームでありながら、リリースでは押し出す方向の安定性を強く意識しているように見られ、それに合うようにSunny SP3が設計されているように感じました。
つまり、Sunny SP3は「プッシュ型に最適」というよりも、“押し出す方向に力を素直に伝えたいプレイヤーに最適”と考えるのが正しいのかもしれません。
詳細は公式サイトで確認してください

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筆者の簡単なプロフィール
ダーツ歴12年、PERFECTプロ歴3年。
ダーツの技術やバレルの特徴を調べるのが楽しみです!
実際に投げたバレルは400種類以上。(2022/3月現在)
数多くのレッスン受講歴あり、イップス・グリップイップスという経験から自身でも身体について勉強しています。